東京高等裁判所 昭和39年(ツ)187号 判決
およそ給付判決は、執行機関において給付の内容を容易に判定することができこれを誤ることがないようにする必要があるから、本来給付の内容を主文において明確にすべきであり、従つて控訴審においては、被告に対して第一審判決の主文と異る給付を命ずる場合には、それが訴の変更によつた場合でなく物件の表示等について誤謬を訂正したにすぎない場合であつても、判決の主文中において第一審判決を更正するか、ないしは別に第一審判決につき更正決定をなすべきであつて、単に控訴棄却を言渡したのみでは足りないものといわなければならない。ところで原判決は、第一審判決が主文で引用したその末尾添付の物件目録並びに図面と異る物件目録及び図面を添付していることは所論のとおりであつて、しかも理由中において「本件控訴を棄却し、(なお、原判決添付物件目録の記載はこの判決の本文および別紙目録記載のとおり補正された)」と説示したのみで、主文において控訴棄却を言渡し、第一審判決の主文を何ら更正していないのであるから、右原審の処置は不当であり、なお、第一審判決が上告人に明渡を命じたその添付物件目録(一)記載の宅地というのは右物件目録によれば「東京都練馬区西大泉町二、〇二九番地一、宅地一四〇坪のうち南側七八坪七合五勺」とあるのに対して、原判決はその添付目録の(一)に「東京都練馬区西大泉町二、〇二九番宅地一四〇坪(別紙図面ABCDEFAの各点を順次結ぶ直線で囲まれる範囲内の土地)」と記載してあり、理由の前記説示中「この判決の本文の記載のとおり」との文言もそれ自体では判文中の如何なる箇所を指すのか不明である。
しかし、原判決事実欄の被上告人の請求原因の冒頭には「一、被控訴人は別紙目録(一)記載の土地を所有している。二、被控訴人は大正年代から控訴人らの先代高橋竹一に対し右土地のうち別紙図面ABCFAの各点を順次結ぶ直線で囲まれる範囲内の土地七七坪九合三勺(以下本件土地という)を含む土地一三七坪八合五勺を賃貸していたが、昭和三三年三月頃右賃貸地のうち本件土地を除く部分の返還を受け、以後本件土地のみを賃貸することになつた」と、またその第六項には「……本件土地を明渡すことを求める(なお原判決添付の別紙目録の記載は、正確を欠く点があるので、これを右本文及び別紙目録に記載のとおり補正する)。」とあり、更に理由の第五項にも「……本件土地を明渡すことを求める被控訴人の請求はすべて理由がある。」とあるのであるから、前記の「この判決の本文の記載のとおり」との文言は、明渡を命ずる土地について、原判決のいう本件土地すなわち原判決添付目録(一)記載の宅地一四〇坪のうちの原判決添付図面のABCFAの各点を順次結ぶ直線で囲まれる範囲内の土地七七坪九合三勺を指すものであることが理解でき、そして右土地七七坪九合三勺と第一審判決添付目録並びに図面表示の七八坪七合五勺の土地とは、その坪数に僅かな相違があり図面に表示された形状にも若干の違いがあるけれども、記録を調査すれば、何等別異の土地ではなく、結局において同一対象の土地であり、また上告人らに収去を命ずる建物についても同様であつて、いずれもその表示の不正確や誤謬を訂正したもので何ら訴の変更に基くものでないことは記録上明らかであるから、たとい原判決はその主文と理由とにくいちがいがあるからといつても、そのくいちがいは第一審判決につき更正決定をなすことによつて解消するものであるから、結局原判決にはこれを破棄するに足りる違法はないことに帰着する。
(牛山 福島 今村)